ナヤミ
作・秋雨うどん様
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「もう昔のようには接してくれないのですね。」
ミーティアは虚ろな瞳で窓の外を見つめていた。
「ミーティアは寂しいです。」
「…今日はいかがなさいました?姫様。」
ミーティアは一人の近衛兵を部屋に呼び寄せた。
暗黒神を倒し、自分を呪いから救ってくれた人―
唯一の友達…だと思っていた人―
「エイト。」
「はっ。」
「少し、お散歩に参りましょうか。」
「はっ。」
どうしてこんな風になってしまったのだろう。
どうして僕はこんな言葉遣いなんだろう。
ドルマゲスが現れる前までは、こうじゃなかったのに。
姫が馬に変えられて、姫のために戦って、ようやく平和なトロデーンを取り戻した。
皆あの時のままだ。呪いを掛けられる前のままだ。
変わったのは、僕だけだ。
「ミーティアでは退屈ですか?」
「…え?」
「ヤンガスさんやゼシカさんやククールさんがいないと、退屈ですか?」
「姫様…。」
「旅をしている時のエイトは、とても楽しそうに見えましたよ?
ミーティアは内心嫉妬していましたわ。
トロデーンではあんなに明るい表情を見せた事が無かったもの。」
「………。」
「それに昔はエイトから散歩に誘ってくれたのに。」
「姫様は間も無くサザンビーク王家に嫁がれる身であります。
もはや一介の兵士がそのような事をしてはならない状況であります。」
「エイトは、もうミーティアを友達だと思っていないのですか?」
「思っています。けど、以前のように接してはまずい…かと。」
「どうして?」
「世間体という物がありますから。」
「…じゃあ、二人っきりの時も堅苦しい態度を取るのはどうしてです?」
「………。」
エイトは今日初めてミーティアと目を合わせた。
しかしすぐに視線を逸らし、頬を掻く。
「エイトに命令していいですか?」
「何なりと。」
「ミーティアとエイト、二人っきりの時だけはミーティアを姫だと思わないで。
他に人がいる時は今の態度で構わないから。お願い。」
「…うん。わかった。」
エイトがそう言った瞬間、ミーティアが満面の笑みを浮かべた。
「約束だからね?破っちゃ駄目よ?」
「うん。約束するよ。」
ミーティアとは、もうすぐ会えなくなる。
少し寂しい。
すごく寂しい。
本当にそれでいいのかな…僕は。
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<管理人コメント>
エンディング前の数ヶ月間の間の出来事ですね。
切ない…!何とも言えない切ない雰囲気がひしひしと伝わってきます。
セリフの1つ1つからもどかしい想いが溢れていて、締め付けられます…。
個人的には、エイトの口調が変わる時が好きです。
秋雨うどん様、素敵なSSを本当にありがとうございましたv
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